ブラジルから来た少年

ストーリー:
南米パラグァイの街。パレードが繰り広げられている。カメラの青年コーラーはレストランの客の中に見覚えのある顔を見つけた。「あいつだ!」
又、不審な人物がやって来て、連れ立って車で立ち去るのを、コーラーは車で追った。闘牛場から飛行場へ、なにやらあわただしい動きがある。コーラーは彼らの顔をカメラに収めた。

オーストリアのウィーン。年老いリーバーマンの所へ写真が届いた。何人かの顔写真だ。ナチスの残党だ。リーバーマンナチスの残党を追いかけつづけてきたが、最近は年のせいで、活動も鈍りがちだ。

パラグァイのある邸宅で会合が開かれようとしていた。主催はメンゲレ博士だ。彼はアウシュビッツの主任医師で250万人を殺し、子供の生体実験をしたことで知られている。ナチスの残党が集まった席で、メンゲレは演説を始めた。「我々の第四帝国を始めるために、今後2年半の間に94人の人間を殺す。殺す相手は世界各地の65歳の公務員である。・・・・」皆は怪訝な面持ちで聞いている。
邸宅の外庭にコーラ−がいた。盗聴器を仕掛けて会議の様子をテープに収めていた。しかし、見張りに見つかり、一目散に逃げた。

アパートへ戻ったコーラ−はウィーンのリーバーマンに電話をした。夜中の3時である。リーバーマンが電話の向こうに出るとコーラ−は「メンゲレのテープを聞いてくれ」と、テープを回し始めた。その時、ナチの一味が押し入った。コーラ−は刺された。メンゲレが受話器を切った。

リーバーマンはコーラ−の身に何かあったと察知するがどうしようもない。しかし、「65歳の公務員を94人殺す」とは何のことか??

ナチス残党は世界各地のあらかじめ決められた65歳の公務員を殺していく。やがて、リーバーマンは調査に乗り出した。65歳の公務員が事故死、変死した遺族を訪ねて周った。
ある郵便局長の家では、若い未亡人が出てきた。暴力をふるう亭主だったらしく、むしろ亭主の事故死を喜んでいた。出てきた少年は色白でブルーの目をした可愛げのない少年だった。
さらに、別の家を訪問した時、リーバーマンは目を疑った。出てきた少年は先日の郵便局長の家の少年に瓜二つではないか。それは双子よりも似ている可愛げのない少年だった。

リーバーマンは刑務所に収監されている元ナチの女看守マローニを訪ねた。14年前、大量の赤子を手配した事実があった。その赤子たちはブラジルから運ばれてきたという。

その頃、ナチ集会が開かれ、あまりの危険さに計画は中止になった。すでに世界中で14人殺したが、リーバーマンらが嗅ぎ回っていることも理由のひとつだった。メンゲルは激怒した。「リーバーマンごとき老いぼれに俺の計画を邪魔されてたまるか!」

生物学研究所を訪れたリーバーマンは、そこの教授から信じ難い話を聞く。瓜二つの可愛げのない少年の話をすると、教授は言ったのだ。「それはひょっとするとクローンではないですか?」「・・・クローン・・・・・?」
植物の細胞の一部を切り取って培養するとまったく同じ植物が出来るという。動物では?・・・・。エビ、カエルはもちろん、ウサギでも実験は成功していた。人間でも理論上可能だという。「死んだ人間でもできますか?」とリーバーマン。「生きている時に、皮膚の一部とかを採取しておけば可能です・・・」リーバーマンは悪魔的天才医師メンゲルの所業を悟った。「ヒトラーだ!!」
ヒトラーは税官吏の父親が52歳の時誕生。母親は若く29歳で、甘やかされて育った。そして、父親は65歳で死亡、その時ヒトラー14歳だ。ヒトラーのクローン人間を大量に作り、ヒトラーと同じ環境に置けば、第二、第三のヒトラー
が必ず出現する。それが悪魔メンゲルの壮大な計画だ!

メンゲルの館に火が放たれた。メンゲルの部下による証拠隠滅だ。その頃、メンゲルはペンシルバニアのウィーロックの家に着いた。メンゲルは一人で計画を進めるつもりだ。65歳のウィーロックが出てきた。「リーバーマンさんで?」・・・メンゲルは「イエス」と家に招かれた。ドーベルマンが多数メンゲルを取り囲んだ。
犬がいては話ができないと、ウィーロックにドーベルマンを隣室へ入れさせたメンゲルはやおらピストルを抜いた。地下室でウィーロックを射殺するとメンゲルはリーバーマンを待った。

リーバーマンがやって来た。しかし、中で待っていたのはピストルを構えた宿敵メンゲルだ。リーバーマンは腹を撃たれたが立ち向かいメンゲルと取っ組み合いになる。リーバーマンが開けたドアからドーベルマンが飛び出してきてメンゲルを取り囲んだ。メンゲルは動けない。
そこへ少年が入ってきた。やはり、同じ顔、可愛げのない少年だった。メンゲルは誇らしげに少年をながめた。「父親を探せ!殺されている筈だ!」リーバーマンは叫んだ。やがて、地下室で父親の死体を見つけた少年が戻った。「俺じゃ無い、そいつだ!」とメンゲル。だが、「犬に嘘は通じない。かかれ!」と少年が叫ぶとドーベルマンは一斉にメンゲルに襲いかかった。喉を噛み砕かれメンゲルは絶命した。「あんたはどうするの?医者を呼ばないと死ぬよ」少年は無表情に言った。

一命を取り留めたリーバーマンは病院の一室で横になっていた。訪ねてきたコーラ−の友人に、「94人のヒトラーのクローンを殺さなければなりません。リストを見せてください」と言われ、リーバーマンはポケットから取り出した紙片を燃やしてしまった。「罪の無い人間を殺す訳にはいかんよ・・・・・・」

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